短歌時評 山崎聡子
歌壇俳壇面で毎月掲載している歌人・山崎聡子さんによる「短歌時評」。今月は塚本邦雄の没後20年を機に塚本の短歌を通して「戦後」を捉えなおす、若い世代の視点を紹介。現在に引き寄せて考えます。
塚本邦雄の没後二十年の今年、特集企画が断続的に掲載されている。なかでも目立つのは、塚本の短歌を通して「戦後」を捉えなおす、若い世代の視点だ。
はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる
有名な『日本人霊歌』の一首。角川短歌五月号では、生駒大祐が「健康的な人間が死を現実的なレベルで意識するのは保険という制度と向き合う時くらい」と現代に即した読みを示した一方、狩峰隆希は戦争で命を落とすことがなくなった戦後の死に対する価値の転倒と、「死の遠近」を通じて時代を照射しようとした塚本の手つきを読み解いている。
塚本と同世代である大正生ま…